営業部長様ご乱心・・・SFA究極の失敗事例
売上・利益を上げた!SFA導入(intro)
かれこれ10年以上も前の昔話なので、話半分なのと、裏話を知っている人は、話を希釈している事で個人特定を回避している点だけご理解下さい。
某社さんでの導入例なのですが、3月にSFAを導入されました。インプリも無事に終了し、SFA導入直後から、商談進捗が見える化でき、6人位の営業マンで構成されていた部門の売上げも、個人個人では目標の達成月、未達成月に若干のばらつきはあった物の、トータルでは毎月目標売上げを達成できていました。
この会社さんは、毎年売上が2月、8月に凹む癖があり、シーズナリティーが存在していました。
営業マンも積極採用をし、7月までは営業マンの増加に伴って売上げも計画通りに推移していました。
ここまでは順調だったのですが、8月に入り、売上に急ブレーキがかかってしまいました。(売上計画を策定する際に、2月8月の売上減を見込まず、対前月〇%で売上が伸びる!と言う夢の複利計算のような売上計画になっていたのを発見した時は、目を覆いました。
※上場企業でも対前年比で考えて、どう考えても達成できるわけの無い目標数値が割り振られる事はかなり多いですし、GlobalVP→地域VP→Director→Managerとそれぞれの段階で目標値にバッファの掛け算が行われて(IBM等のGlobal企業では、バッファを乗せる事を禁止している会社もあります)スタート時点から、負けが確定すると言う期間を3年繰り替えした事はあります。
この時は、私の上のVPと私で、リスク(盛られた目標値に対する責任)を負い、部下には化学的根拠に基づいた目標数値を渡していたので、彼らが200%を達成しても、私達は目標数値をクリアできない状態でした。
悪夢の営業部長様のご乱心
8月のお盆前のそんなある日営業部長が、全営業マンを集めて、開口一番、
「目標達成出来ている営業マンと、出来ない営業マンのばらつきがありすぎる!達成出来ていない営業マンは死にもの狂いで寝る間も惜しんで営業をしろ!多少他の人から嫌われても良いから、方法を盗むとか、資料をコピーしたりとか、色々やれる事があるだろう!」
「目標未達成の人達は総取っ替えの可能性もあるから、そのつもりでがんばれ!」
「売れている人の新規商談決定率は50%、そうでない人は25%、おかしいと思わないのか!?(新規商談の決定率を金額ベースでの算出)」※1
「また、売れている人の平均商談日数はそうでない人よりも短い!みんなも出来るはずだ!(新規営業時の発生から受注もしくは失注になるまでの日数)」※2
との発言をしてしまいました
この会社では、よくあるお話ですが、入社年度の古い人から売上げが高く、浅い人の売上げがなかなか立たない傾向値にあり、勝率、商談日数の短さの異様値が発生している人も社歴の長い人であったりするようでした。
良く話しを聞いてみると、上記条件の人は、(この会社様はシステムをソリューション営業で提案販売している会社なのですが)既存顧客からの紹介、パートナーとの人脈からのビジネスが営業部長の把握している件数以上に多く発生しているため、当然、新規案件登録も、間に入っていてくれている人から紹介を受けても、クローズ直前になるまでなされなかったり、当然、紹介案件なのでクローズ率が高かったりしているとの事でした。
※1.※2.で共通なのですが、良い数値の異常値上位10%~20%及び下位10%~20%は何らかの原因があるはずなので、個別に原因を探る必要があったのですが、(定量データ内の良い数値の異常値も、悪い数値の異常値も突き詰めると必ず何らかの要因が存在する傾向にあります。)
ご乱心の結果
リカバリー出来そうな人のモチベーションアップ(若干名)
リカバリーが難しそうな人の極端なモチベーションダウン(多数)
同席していた他部門の人への営業部門のイメージダウン
「営業じゃなくって本当に良かったと思います」との発言まで飛び足していた模様
になっていたとの事です。
しかも、社歴の浅い人たちへのトレーニングは非常におろそかにされている様子も見受けられた点も注目に値する所です。
「組織もこれだけの規模になると、誰かヒーローがグループの売上げを支えて、全員でチーム目標を達成出来たが、この規模になると一人一人が達成しないと数字は作れないんだ!」との事だったらしいのですが、
元々この会社はインセンティブ制度を引いているため、達成が出来なかった人にはコミッションがかなり減額されてしまっているため、十分未達のペナルティーは支払っている形であるらしいのです。当然会社側から首を切られる前に、収入がおぼつかなくなって、個々に辛い思いはしているとの事でした。
当日、ご相談をいただいた営業の方には、個人的に100%前後行っていらっしゃる方でしたので、まずは未達の同僚のモチベーション(メンタルな)ケア、早急なる教育体制の確立をお勧めしました。ご相談者の方が何処まで実行に移せるかはこれからの問題になると思います。
定量データは常に嘘を付く
定量データは常に嘘を付くという事実を知らないと、本当に恐ろしい諸刃の剣になる物だと思いました。
トップの営業手法を盗み取れる状態に出来るから良いというのではなく、トップの営業手法をマネージメントが研究して、研究から生み出される成果を、新戦力に適応する事で普遍化される手法を生み出し、さらなる発展をめざすためのツールなのですが、統計を取るためでの利用に終始してしまうために、どうしても異常値が正当化されてしまい、本来のマネージメントがSFAを利用して行うべき組織力UPをどうしても見落としがちになってしまいます。
極論を言うと、グループ(団体)の敗因を個々の人間のスキル、努力に転換してしまったら、マネージメントが、自身の業務を放棄してしまっている事と同じ訳でもあるのです。
野球の監督が、敗戦後、「○○がダメだったから今日は負けたんだ」と言い訳をしたら「あんたは何のために監督をしてるんだ?」と思わず聞いてしまいたくなりませんか?
生かすも殺すも運用次第
どの営業支援ツールを使っても、使わなくてもなのですが、武器を生かすも、自殺用の道具にするのも使う側の人間なのだと痛感させられた次第ですが。
有名な著書のコンセプトを実行しようとしてツールを選定すると、ツールに合わせた業務プロセスを強いられる上に、根本を理解しにくいために、(定量データを冷静に数値の導き出す嘘を読み取るためには別のトレーニングが必要なのです)余計な血が流れる事を実感しました。
私の普段行っている営業コンサルティングの、導入後のトレーニング及び業務改善、評価制度の制定のフェーズでは、常にコミッション体系もチームレベル+個人レベル、かつ最小日数単位(1日もしくは1週間)でプログラムを構成するようにしています。
またSFA導入及び利用方法の周知徹底によって、3ヶ月先までの売上げの大まかな予測を立てる方法までを伝授しています。
後日談
部長さんのお話を聞いた営業の方が、営業マンの本来持つ(べきとでも言うべきでしょうか?)負けるもんかパワーで乗り切ってくれる事を期待したいとは思いますが、事の真意はどうあれ、「相手にどう思われるか?、解釈されるか?」が最も重要な事だと考えると、先日の部長さんのご意見は、大きなリスクを伴った発言だったのではないかと思われます。
余談ですが、良くある上記のような根性入れに対する、営業マンの反応には3タイプが存在し、目標をクリアしてしまっているから、まぁ、そんなもんでしょ、と思う方、こんちくしょう!と思ってさらに努力をする方の合計が15%~30%の間、転職も含めて考え始めて思いっきりモチベーションダウンしてしまう方が60%、聞き流して、嫌な雰囲気を味わってしまう人が残りになる傾向にある気がします。
当該の企業様の営業の人々が、全員モチベーションを普通の状態まで回復してくれる事をお祈りしつつ、今日はここまでにさせていただきます。